ヒアリング成功の秘訣 1 目的は”具体的”に設定する 

クライアントへのヒアリングを実施する際に、皆さんはその目的をしっかりと設定できていますか。

ヒアリングの目的の設定が甘いコンサルタントの質問は、物事の表面をなぞるだけで事実を十分に把握することができず、クライアントの抱える問題やその問題を引き起こしている真因にたどり着くことはできません。

ヒアリングに対応する担当者の方にすれば、忙しいのに要領を得ない質問を繰り返されてイライラが募りますが、本社からの要請なので仕方なく付き合わざるを得ません。これでは収集しなければならない重要な情報も容易に入手することはできないでしょう。

物事の本質に迫れない質問しかできない原因は、ヒアリングの目的を上っ面でしか理解できていないことにあります。

ヒアリングの目的について深く考え、その真の狙いを十分に理解できていれば、質問項目も的確になり、必要な回答を得やすくなります。逆に目的があやふやな場合は質問項目もあやふやで、当然入手する回答もあやふやなものになります。つまり、ヒアリングの成否は目的に対する理解の深さにかかっているといえます。

本記事では、ヒアリングに際し目的を理解するための考え方、目的を理解することによる効果、そしてそのためのトレーニング方法について説明します。

目次

目的の設定の仕方 「もうひとつ考える」

あなたはある業務改善プロジェクトのメンバーで、クライアントの業務プロセスの内容を把握しようとしています。
プロジェクトではその業務に携わる現場担当者へのヒアリングを計画しています。その折、基幹系システムの入替えを目的として発足した別のプロジェクトチームが、すでに現場担当者にヒアリングを実施し、その業務プロセスについても調査をおこなったとの情報を得ました。その後、現場担当者へのヒアリングをおこなう前に、別プロジェクトの関係者に話を伺う機会が持てることになりました。あなたのプロジェクトに先行して、同種の調査をおこなっていますので、何かよい情報が聞き出せるかもしれません。

そこで、あなたは何を聞きますか?

当然、相手を理解しないといけないので、別プロジェクトの目的や作業の範囲、スケジュール、進捗状況などは最初に確認することでしょう。ではそのあとにどのような質問をしますか。

ヒアリングの目的をどのように設定するかによって、質問すべき事項は変わります。

たとえば、「重複作業を回避するため」と設定した場合には、以下のような事項を問うべきでしょう。

  • 調査対象とした業務プロセスの範囲 
    (重複している箇所、していない箇所を特定するため)
  • 調査の目的・調査項目 
    (重複する質問の確認。調査の目的が異なれば、同じ業務プロセスを対象としていても問うべきことが異なる可能性があるため)
  • 調査結果をまとめた資料共有の依頼 
    (自身のプロジェクトの作業の効率化等につなげるため)

そこに「自身のプロジェクトの進め方への影響の有無を確認する」という目的を追加する場合には、以下のような事項にも留意して話を聞く必要があります。

  • 新システム導入によってその業務プロセスがどのように変更される予定なのか
    (業務改善の解決策を検討する際に考慮する必要があるため)
  • その業務プロセスにおける新システムへの切り替えタイミングはいつか
    (新システム導入までの間に暫定的な改善策を講じておくべきか検討する必要があるため)
  • スケジュールに影響するような事項の有無
    (自身のプロジェクトのスケジュールを立案した際の前提条件が変われば、スケジュールも変更する必要が出てくるため)

さらに、「自身のプロジェクトの作業を進めるうえで有用な情報を入手する」という目的も加えるなら、以下のような事項も念頭に置いておく必要があります。

  • クライアントの業務プロセスに特有の特殊事情
    (商慣習、システム上の制約など)
  • その他、すでに実施した調査で得ている、こちらのプロジェクトにも関係する重要な情報

このように、ヒアリングの目的を具体的に設定することで質問すべき事項が明確になります。

目的を、「別プロジェクトの概要を確認する」といった程度で認識しているようでは、質問に一貫性も網羅性もなく、結果的に何も役に立つ情報を得ることはできずに終わることになってしまいます。目的を理解したと思っても、そこでさらにもう一歩踏み込んで、「なぜ?」、「それは何のために?」と考えるようにすると、目的をより具体的に設定することができるようになります。 ヒアリングの時間は限られています。その限られた時間の中で効果的、効率的に質問を繰り出して必要な情報を入手するためには、ヒアリングの目的を具体的に設定することが何より重要です。

目的を具体的に設定することの効果

ヒアリングの目的を具体的に設定することによって、質問すべき事項を明確にすることができることはすでに説明しましたが、このほかにもヒアリングの質の向上につながるメリットを得ることができます。

事前の準備作業も明確になる

質問すべき事項が明確になると、その質問に対する回答を円滑に引き出すために、先方に用意しておいていただきたい資料・データも明確になるほか、その質問に回答できる方をミーティングに参加できるように調整していただくことも可能になります。また、ヒアリングに先立ちこちらで用意しておく資料の内容も、必要な情報に絞ることができます。

事前の準備作業が明確になると、必要な情報を円滑に入手できる可能性がさらに高まります。

相手の不安、不信感を払拭できる

多くの場合、ヒアリングは初対面の相手に対しておこないます。相手は「何を聞かれるのだろう」、「何を調べているのだろう」という気持ちで少なからず緊張しているものです。そんなときに、矢継ぎ早に「あれはどうなっていますか」、「それを見せてください」と質問攻めにされては、どこまで答えたらよいだろうかと不安になることでしょう。

最初に、ヒアリングの具体的な目的を相手に伝え、理解していただくことで、なぜこの質問を聞かれているのか、どのような答えを求めているかをはっきりと認識できますので、相手の余計な不安や不信感をぬぐうことにつながり、回答の精度も高まることが期待できます。

拠り所になる

ヒアリングは、相手との対話を通じておこなうものであるため、相手の持っている情報の量や質、個人のパーソナリティ等によって、事前に思い描いたシナリオ通りに進まないことはよくあります。ときには、話が脱線したり、議論が迷走したりして、余計な時間を費やすおそれもあります。そのようなときに、ヒアリングをおこなう皆さんの頭の中で具体的な目的をしっかりと意識できていれば、流されることなく目的に立ち返り軌道を修正することができます。

目的を理解するためのトレーニング方法

目的を具体的に設定する習慣は、日々の仕事の中で身に付けることができます。

書き出してみる

ヒアリングの目的を頭で考えることは普段していると思いますが、それを文字に書き起こすことをしていますか。目的を文章にして書き出そうとすると、意外にも頭の中で考えていたと思っていた目的も、あやふやな表現になってしまい上手に書けないことに気が付きます。

書き出すことができても、文字に起こして読んでみると、抽象的な表現や言葉の羅列で、具体性がないことに気が付くでしょう。これが、目的を明確に設定できていない状態です。

ヒアリング時に配布する資料を用意する際には、必ず「本ヒアリングの目的」というページを作成し、頭の中にある「目的」を文字に起こすようにしましょう。クライアントの目に触れる文章ですので、曖昧な表現やおかしな言葉は使えません。そのような意識で目的のページを作り続けることで、自然とセルフレビューのスキルも上達します。

「目的を具体的に設定する」ということは、必ずしもヒアリングに限った話ではありません。コンサルタントが仕事をする際に、どんな小さなタスクであっても目的を明確にすることは、作業を円滑に進めるための助けとなります。何かを検討する、行動する際には必ず目的を書き出してみましょう。

目的を階層化する

よく耳にする「なぜなぜ分析」ですが、これは問題が発生した際に「なぜ?」を繰り返して問うことにより、問題を引き起こす真の原因を特定し、根本的な改善策を見つける分析方法です。ここでは「なぜ?」を5回繰り返せ、と言われます。これは、何かの“原因”は、何かの“結果”という階層構造を持っているからです。

目的を具体的に設定する際にも、この「なぜなぜ分析」は有効です。

「目的」を書き出してみたら、そこに書かれている文章に対して「なぜ?」と問いかけてみましょう。きっと見えなかったものが見えてくることでしょう。

「なぜ?」を繰り返すという思考方法は、物事の本質を追求するためには非常に効果的です。コンサルタントの仕事は、自分の意見だけでなく、相手(クライアント)の意見についても「なぜ?」を繰り返して、問題や真の原因を特定することです。疑ってばかりのようですが、これは決して「猜疑心」なのではなく、「慎重さ」の表れです。問題解決のプロフェッショナルとして、解決につながるかもしれない材料ひとつひとつを精査することは当然のことです。そうして導き出した結論にクライアントは信頼を寄せてくれます。

自信を持って「なぜ?」を繰り返しましょう。

まとめ

ヒアリングをおこなう際には、その目的をできる限り具体的に設定しましょう。

そうすることで、質問項目や事前の準備作業が明確になり、相手とのコミュニケーションも取りやすくなるので、ヒアリングが成功する確率が飛躍的に高まります。

目的を具体的に設定する習慣は、目的を書き出してみること、「なぜ?」を繰り返すことによって日常的な仕事の中で身に付けることができます。「目的を具体的に設定する」という行為は、コンサルタントのすべての仕事において必要なことですので、何をするにも、目的を具体化し、それを意識して行動できるようになりましょう。

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