憧れのコンサルティング会社に就職し、毎日専門知識やITツールの操作方法などを一生懸命に勉強しているにもかかわらず、実務ではなかなか思うようにパフォーマンスが上がらず悩んでいるコンサルタントの方は意外に多くいます。
その大きな原因として、コンサルタントとして仕事をするうえで必要なビジネスソフトスキルが不足していることがあげられます。
ビジネスソフトスキルを鍛えれば、今以上に仕事の現場で積極的に発言ができ、仲間やクライアントと建設的なディスカッションをおこなうことができるようになり、チームやクライアントからも信頼され、自信も生まれます。
本記事では、ビジネスソフトスキルの必要性と、コンサルタントにとって習得することが不可欠の3つのスキル(コアスキル)について説明します。
筆者がコンサルティング業界に飛び込んだのは2000年11月、当時まったく未経験の素人でした。そんな私がいまも現場の第一線で活躍し続けることができているのは、ビジネスソフトスキルのおかげだと信じています。
本ブログでは、筆者が長年のコンサルティング実務を通じて身に付けた、変化の時代を生き残るための実践的ノウハウを、体系化して解説します。
ビジネスソフトスキルとは
仕事の現場においては、ビジネス書や専門書に書かれたとおりの事象が起きるとは限りません。また、同じ事象が二度、三度と起きるとは限りません。
技術は日々進化し続け、仕事に必要な専門知識も次から次へと増え続けますし、環境も常に変わります。どんなに技術や専門知識を覚えても、このような変化に適応し続けることは難しいでしょう。
企業で活躍し続けるためには、技術や専門知識に加え、変化に適応できる力を身に付ける必要があります。
ある仕事を遂行するために必要とされる、その仕事に特有の技術や専門知識などはハードスキルと呼ばれます。
これに対してビジネスソフトスキルは、創造力、コミュニケーション力、問題解決力といった、仕事を円滑に進めるためのベースとなる個人の能力を指し、「社会人基礎力」などといわれることもあります。
ビジネスソフトスキルを身に付け高めることができれば、日々の仕事の生産性や効率性も向上しますし、何より未経験の仕事や事象に直面しても、混乱することなく目指すゴールにたどり着くことができるようになります。
たとえば、新たな会計システムを導入する際に、どんなに会計基準やシステムに関する知識が豊富であっても、経営者や部門との間の調整力や、説明力、メンバーを動かすリーダーシップなども兼ね備えていなければ、関係者を上手に巻き込みながらプロジェクトを進めシステムを最短ルートで稼働させることは難しいでしょう。
また、まったく知識のない作業を担当することになっても、上司、同僚から上手に情報を聞き出して、その仕事で何が重要なことか、自分の役割を果たすために何をすべきかを自ら考えることができれば、短期間で自分らしいパフォーマンスを発揮することもできます。
お客様からこれまでに自身で対応したことがないような相談を持ちかけられても、原理原則に照らして適切なアドバイスをおこない信頼関係を一層深めることも期待できるでしょう。
ビジネスソフトスキルこそが変化の激しい時代を生き抜く社会人の最強の武器です。
コンサルタント習得必須 3つのコアスキル
コンサルタントの本分は、クライアントの抱える問題を最適な方法で解決することにあります。
クライアントの期待に応えるためには、クライアントの置かれている現状(事実)を正しく理解して問題を設定し、その問題を引き起こしている真の原因を特定し適切な解決策を導き出したうえで、その内容をクライアントにわかりやすく報告・説明できなければなりません。
ビジネスソフトスキルの分類、種類について正式な決まりごとはありませんが、コンサルタントが自身の責任を果たすために必ず必要なビジネスソフトスキルを整理すると、
- 聞く力
問題を正しく理解する(=問題の構造を明らかにする)スキル - 考える力
真の問題を把握して、課題(解決すべきことは何か)を適切に設定し、最適な解決策を導き出すスキル - 伝える力
相手に解決策を理解・納得させ、行動を促すスキル
の3つに分類することができます。これらはそれぞれ別個のものではなく互いに影響しあうもので、あるスキルが向上することにより別のスキルについても能力が向上し、個人としての総合的な能力が一層高まる相乗効果をもたらす関係にあります。
3つのスキルは社会人であれば誰しも習得すべきものですが、問題解決のプロフェッショナルであるコンサルタントにおいては、より一層高い水準で保持することが求められます。
聞く力
前述のとおり、コンサルタントの本分は、クライアントの抱える問題を最適な方法で解決することにあります。
そのためには、対話を通じて相手の問題を解決するために必要となる「現在の状況(事実)」、「問題についての相手の考え(主張)」に関する情報を漏れなく入手しなければなりません。
ですが、クライアントが自らの問題を論理的に整理できておらず、問題の原因につながる可能性のある重要な事実を見落としていたり、問題の原因と結果の関係性について混乱していて、自身の置かれている状況をコンサルタントに正しく伝えることができずにいる場合もあります。
ここでコンサルタントは、クライアントに対し効果的に質問をおこない必要な情報を引き出し、ほぐれた糸を解きほぐすようにクライアントの問題の論理構造を明らかにし、その問題を引き起こしている真の原因を特定してあげなければなりません。
聞く力を強化し、適切に現状を把握することは、クライアントの抱える問題を解決するための最初のステップです。
考える力
クライアントの抱える問題に対し最適な解決策を明らかにするためには、収集した「現在の状況(事実)」、「問題についての相手の考え(主張)」に関する情報を分析して解決すべき問題を識別し、その問題を引き起こしている原因(なぜなのか)を見定めなければなりません。そして、問題の原因に対し最も効果的で効率的な解決策を選択します。
ここで、問題を正しく識別できなければ、そのあとの原因分析、解決策の検討も誤った方向に向かってしまいます。問題を正しく認識できても、その原因を見誤ってしまうと解決策を講じたところで期待どおりの改善効果は得られません。
さらに、真の原因を突き止めることができたとしても、複数の選択枝の中からその企業に最適な解決策を選ぶことができなければ、無駄な費用、時間を費やすおそれがあります。
問題の識別、原因の特定、解決策の選択という一連の作業は、事実(本当か?)と論拠(なぜそういえるのか?)に裏付けられた論理的思考を繰り返す行為であり、これこそがコンサルタントが提供する付加価値の源(みなもと)です。
コンサルタントによる考え抜かれた深い洞察は、クライアントを正しい方向に導く羅針盤の役割を果たします。
伝える力
問題を引き起こしている真の原因を特定し、最適な解決策を立案できたとしても、最後の最後でそれをクライアントに伝えらなければ意味がありません。
その解決策がいかに必要か、素晴らしいかを理解させ、さらに共感させなければプロジェクトは前に進みません。そのために、コンサルタントは、聞いて、考えたことを、相手にわかりやすく伝える技術を習得する必要があります。
一般的な伝え方は、ドキュメント(文章や図表によって作成された文書)を使用して、口頭(最近は対面ではなくともオンラインという形式もある)でその内容を説明する方法です。
自分の主張を相手にわかりやすく伝えることができるようになるためには、ドキュメントを作成するスキルと、口頭で説明するスキル(プレゼンテーションスキル)を強化しなければなりません。 コンサルタントが考えに考え抜いて導き出した最適な解決策は、相手に理解・共感してもらい、行動に移してもらえてはじめて、クライアントの問題解決に役立ったと言うことができます。
まとめ
コンサルタントの仕事は変化の連続です。過去の仕事とまったく同じやり方が通用する仕事など絶対にありません。仮に目的が過去の案件に類似したプロジェクトであっても、クライアントの直面している問題やプロジェクト進捗課題の内容は異なりますし、進め方もその都度カスタマイズをして、そのときどきに最適な方法を選択しなければなりません。
このような変化に対応し、仕事のパフォーマンスを向上させる「聞く力」、「考える力」、「伝える力」の3つのコアスキルを習得し、その水準を高めるように日々腕を磨きましょう。
ビジネスソフトスキルは、関係する書籍を何冊も読みあされば短期間で上達するものではありません。日々の経験(成功体験だけでなく、失敗体験も)を積み重ねることによって次第に身に付いていくものですが、3つのコアスキルを意識して仕事に臨めばその効果はすぐにあらわれはじめます。
他の記事で、3つのコアスキルの具体的なテクニックを説明していきますので、コンサルタントとしてのスキルを向上させたい方はそちらも一読してください。