改善活動やプロジェクトが迷走する原因の多くは、実は“問題そのもの”ではない。 目標が曖昧なまま走り始めてしまうことにある。
問題とは「現状と目標のギャップ」である以上、目標が曖昧であれば問題も曖昧になり、判断基準がないまま検討が進む。 私はコンサルタントとして数多くのプロジェクトを経験してきたが、目標を定めずにスタートして成功した例は一度もない。 以下では、なぜ曖昧な目標が改善を迷走させるのか、その構造を述べたい。
問題とは「現状と目標のギャップ」である
問題とは、現状と目標との間のギャップである。 よって、解決すべき問題は、現状を正しく把握し、目標を明確にすることによって初めて明らかになる。
しかしながら、目標を明確にせず、「まず、できることから始めてみよう」という人がいる。 いきなり“あるべき姿”を考えろと言われても何が正解かわからない、という気持ちはわからなくもない。 時間や予算は限られているのだから、いまできることから始めつつゴールを探ろうという発想である。
確かに一理あるように聞こえる。 「試行錯誤しながら自分たちが目指すべき姿を見出す」というシナリオは、“努力は裏切らない”という言葉にも通じるものがあり、なんとなく共感できる。
「できることから始める」という進め方の危険性
しかし、コンサルタントとして数多くのプロジェクトを経験してきた立場から言うと、そのように目標を明確にせずスタートし、走りながら考えるという進め方で成功した試しはない。
何か物事を改善しようとしたら、目指すべき“あるべき姿”が定まっていなければ、成果物は「できることの寄せ集め」になる。 それが結果的に会社に良い効果をもたらすことだったのか、その成否を評価することもできない。
また、検討の段階では色々な意見が出るであろうが、その意見を採用すべきかどうかの判断基準こそが目標である。 目標が明確であるからこそ、検討過程で出てくる意見や案の要不要、適否を判断することができる。
往々にしてこのような取り組みは途中で頓挫する。 仮に何かしらの成果物ができたとしても、判断基準のない状態で作り上げられた成果物は誰の役にも立たず、使われず、金と時間を浪費しただけという結果になる。
(そして大抵の場合、その責任はコンサルタントが負うことになる。)
「失敗したけれど、検討を通じて色々考えることができたね。」 「高い授業料を払ったけど、成長できたね。」 で済ませられるのであればよいが、会社が業務として行う以上、期待される成果を出すべきである。
目標が曖昧なままでは改善は必ず迷走する
そのためには、どのような状況であっても目標設定という行為をおろそかにすべきではない。 目標は曖昧なままでは機能しない。曖昧さを排除するためには、次のような基本を徹底する必要がある。
目標の曖昧さを排除するための3つの基本
- 曖昧な言葉、単語は定義を明確にする。
- 達成すべき状態を数値化、定量化する。
- 誰が、いつまでに、何を、どうする(できるようにする)を明確にする。
この3つを押さえるだけで、目標は“使えるもの”になる。 判断基準が生まれ、検討が進み、改善が前に動き始める。
「考えても思い浮かばない」のではない。 「考えていないから思い浮かばない」のである。
まとめ
以上述べてきたように、改善活動やプロジェクトを進めるうえで、目標設定を曖昧にしたまま走り始めることは致命的である。 問題とは現状と目標のギャップである以上、目標が曖昧であれば、問題も曖昧になり、判断基準も曖昧になる。結果として、検討は迷走し、成果物は「できることの寄せ集め」になり、誰にも使われないものが出来上がる。
目標が思い浮かばないのではない。考えていないから思い浮かばないのである。 どのような状況であっても、まず目標を明確にすることを怠ってはならない。 曖昧な言葉を定義し、数値化し、誰が・いつまでに・何を・どうするのかを明確にする。 この基本を外さなければ、改善は必ず前に進む。

