ヒアリングの成果は、質問のテクニックだけで決まるわけではありません。
なによりも、相手との信頼関係をどれだけ早く築けるかが、入手できる情報の質と量を大きく左右します。
そして信頼関係を築くために欠かせないことは、感謝・勇気・謙虚という3つの姿勢を持ってヒアリングに臨むことです。
この3つの姿勢は、相手に「この人は私の仕事内容をよく理解しようとしてくれている」、「この人に相談すればなにかよい変化が起きるかもしれない」という安心感と期待をもたらし、結果としてヒアリングの成果を大きく向上させます。
本記事では、ヒアリングを成功するためにコンサルタントが保持すべき3つの姿勢の意義について説明します。
なぜ“姿勢”がヒアリングの成果を左右するのか
ヒアリングの場では、相手は常に「この人にどこまでの情報を話したらよいだろう」という不安を感じています。
どこまで話すべきかの判断基準は、質問項目の内容よりもむしろ、聞く側であるコンサルタントの“姿勢”によります。
ヒアリングは、ヒトとヒトとの間のコミュニケーションです。
- どれだけ相手を理解しようとしているか
- どれだけ相手の負担を軽くしようとしているか
- どれだけ敬意を払い感謝しているか
- この問題に対してどれだけ本気で挑んでいるか
こうした心証は、文字や言葉よりも、表情・声のトーン・態度といった非言語の情報から伝わります。つまり、姿勢が整っていないと、どれだけ優れた質問を用意しても、相手は心を開いてはくれません。
逆に、姿勢が整っていると、相手は「この人なら話してもいい」と判断し、ある種の信頼関係が生まれてヒアリングは自然と深いレベルに進んでいきます。
ヒアリングは“技術”より、まず“姿勢”です。
感謝:相手の時間に敬意を払う
経営者層であれ、現場担当者であれ、ヒアリングの相手は皆忙しい最中に時間を作ってくれています。
ヒアリングとは相手の貴重な時間を“奪う”行為です。
そのため、質問をするコンサルタントには、質問の時間を頂けたことに深く感謝し、相手が少しでも話しやすくなるような環境をつくる義務があります。
感謝の姿勢は、ヒアリングの前、最中、後の行動や態度で表すことができます。
ヒアリング前
ヒアリングに向けた準備には、事前の情報収集、確認項目・質問項目の検討、各種資料の準備などがあります。
たとえば資料の準備について考えてみましょう。
通常、ヒアリングを行う際には、ヒアリングの目的や確認事項、進め方、参考資料などをとりまとめ、相手に説明できるように準備します。
このとき作業の効率化を図るために、過去のヒアリングで使用した資料を焼き直すことがありますが、ヒアリングの目的や相手の置かれている状況などについてよく考えず、過去の資料をベースに形だけ整えた“おざなりな資料”は、非常に事務処理的な匂いがして作成者の気持ちが伝わってこないものです。
相手がヒアリング経験のある方であれば、すぐに使い回しの資料であることを見抜くでしょう。
そのヒアリングのために十分に練られた資料は、たとえ1ページだけであっても敬意を感じさせ、相手を“協力モード”に引き込む力を持っています。
仮に、どうしたら相手から必要な情報を引き出すことができるかを考え抜いた結果、過去資料と似た構成になったとしても、説明を受けたあとの相手の印象は全く違うものになっているはずです。
ヒアリングに定石はあっても、過去の経験と全く同じヒアリングなどありません。 “効率化を図る”ことは、“手を抜く”ことではありません。どんな些細な作業であっても、貴重な時間を提供してくれる相手への感謝の気持ちを持って準備にあたり、そのヒアリングのために最善を尽くすこと。その感謝の姿勢が伝わると、相手も「この人には話してあげよう」という気持ちが生まれます。
ヒアリング中
感謝の姿勢は、ヒアリング中の丁寧な言葉遣い、柔らかな表情、相手の発言を遮らず最後まで聞こうとする態度などにあらわれます。
こうした聞き手の態度は、相手の緊張をほぐし、話しやすい雰囲気をつくり出します。
ヒアリングを成功させるためには、仮に初対面の関係であっても、聞き手とヒアリングの相手との間に一種の“信頼関係”が必要です。
どんなに的確な質問をしたとしても、相手が心を開いてくれていなければ、必要な情報を得ることは容易ではありません。相手も人間ですので、心の許せない相手に対し積極的に情報を提供しようとはしないものです。
感謝の姿勢は、短時間で相手との信頼関係を築く“もと”となります。
ヒアリング後
“聞きたいことが聞けたら、あとはお構いなし”
ヒアリングを終えると頭の中が次の作業のことで一杯になり、ヒアリングに協力してくれた相手に対する敬意がつい薄らいでしまいがちです、最後の締めくくり方こそが肝心です。
ヒアリング後には議事録を作成しますが、実施したあと何日も経ってから議事録が送られてきても、記憶があいまいで内容を確認するのには苦労します。場合によっては、読んでもらえないおそれもあります。
時間がかかった分、内容は正確で、文章も簡潔にまとまり読みやすいのであればまだ良いですが、内容の整理が不十分、誤字脱字が散見される、肝心な部分を書き洩らしているような場合には、ヒアリング中に構築した信頼関係も台無しになり、相手には悪い印象しか残らないでしょう。
ヒアリング後に速やかに議事録を送付し、発言内容に加除修正がないかを記憶が確かなうちに確認してもらうことは、関係者の認識違いを防止するだけではなく、相手にその取り組みへの参加意識を芽生えさせ、その後の協力を得やすくすることにもつながります。
勇気:知らないことは「知らない」と言う
「こんなことを聞いたら恥ずかしいな」
コンサルタントとして自分の仕事に関係する専門用語や環境の動向について日々情報を仕入れておくことは当然のことですが、それでもヒアリングをしていると、相手が当たり前のように使っているのに意味がわからない単語に出会うことがあります。
周りの人も皆わかっている様子なため、その単語の意味を尋ねることは自分が知識不足、経験不足であると思われそうで聞きたくても聞けず、あとになって「やっぱり聞いておけばよかった」と後悔する。そんな経験はありませんか。
本当に恥ずかしいことは、体裁を気にして知ったかぶりをし、大切な情報を聞き漏らすこと、理解できないままヒアリングを終えることです。
事前にしっかりと準備をしたうえで、知らないことは「知らない」、わからないことは「わからない」と言うこと。その姿勢は、相手の説明内容への理解を深めるとともに、相手に「自分のことを理解しようとしてくれている」という心証を与えることにもつながります。
「こんなことを聞いたら嫌がられるかな」
ヒアリングでは、ときに相手の核心に触れる質問をしなければならない場面があります。「ちょっとしつこいかな」、「嫌がられないかな」という思いから、それ以上掘り下げることを止めてしまっては、表面的な情報しか得ることはできません。
コンサルタントに期待されていることは、クライアントの問題を解決してあげることです。そのためには、ヒアリング相手が触れられたくないと思っているような事柄でも、勇気を持って質問する覚悟が必要です。
この質問は、決して相手を責める質問ではなく、問題解決という目的のために、事実を正しく理解するための質問です。
この意図が相手に伝われば、相手は不快な気持ちから次第に「真剣に向き合おうとしてくれている」と感じるようになります。
謙虚:相手のありのままを受入れる
コンサルタントはさまざまな企業で多くのプロジェクトを経験します。経験が増えれば増えるほど、「きっとこうなのだろう」という仮説が頭に浮かぶようになります。
最初に仮説を立てて、その仮説が正しいかどうかを検証しながら結論を導く仮説思考は、
現状を理解し問題を特定する際に有効な手法ですが、この仮説を考える習慣がときにヒアリングの質を下げてしまうことがあります。
相手の話を少し聞いただけで、「きっとこのケースもこうなのだろう」と思い込んでしまい、必要な深堀りをせずに次の確認事項に移ってしまうと、肝心な事実を見落としてしまうおそれがあります。
これは、事実を把握できるチャンスを自ら放棄しているようなものです。
ヒアリングで必要な謙虚さとは、自分の理解、認識が常に正しいとは限らない、相手の置かれている状況や事象をありのままに受け入れるという姿勢です。
謙虚な姿勢は、「教えてください」という態度としてあらわれ、相手は「自分の話をちゃんと理解しようとしてくれている」と感じます。
まとめ
ヒアリングの成果を上げるためには、ヒアリング相手との間に信頼関係を構築する必要があります。そのためには、ヒアリング技術云々の前に、感謝・勇気・根拠という3つの姿勢を持つことが大切です。
姿勢が整えば、信頼関係が生まれ、信頼関係が生まれれば、ヒアリングは自然と深まります。
ヒアリングに臨む前に、自分に以下のチェック項目を問いかけてみるようにしましょう。
- チェック1 相手の時間と情報を頂けることへの感謝の気持ちを持てているか
- チェック2 問題解決のために、踏み込んで質問をする覚悟ができているか
- チェック3 思い込みを捨て、相手の説明をそのまま受け入れる準備ができているか


