コンサルタントにとって「伝える」とは、単なる“情報提供”ではなく、クライアントの未来を変えるための“働きかけ”です。
クライアントの問題解決のために、自身の主張を相手に「理解」してもらい、さらに「共感」を生み、そして「行動」を引き出すこと。この3つがそろって、初めて「伝わった」と言えます。
どんなに資料作成やプレゼンテーションの準備に時間をかけても、クライアントが「その通りにやってみよう」という気持ちになり、実際に実行して成果を得なければ意味がありません。
本記事では、コンサルタントにとっての「伝える」の本質と、成果を出すために欠かせな3つの要件について解説します。
「伝える」とは “情報提供” ではなく “働きかけ” である
「時間をかけて資料を準備し、一生懸命説明しているのに、なかなか上司やクライアントを説得できない」
コンサルタントとして働く中で、そんなもどかしさを感じたことはありませんか。その原因は、「伝える=情報を渡すこと」と考えていることにあります。
コンサルタントの本分は、クライアントの抱える問題を最適な方法で解決することですが、解決策を実際に社内で実行する主体はクライアントです。解決策をクライアントに伝え、行動に移してもらう必要があります。
しかし、情報を渡すだけでは、人は動きません。
- クライアントが理解してくれているか
- その内容に共感しているか
- 行動に移せる状態になっているか
コンサルタントが考えに考え抜いて導き出した最適な解決策は、これら3つの要件が揃って初めてクライアントの問題解決に役立ったということができます。
つまり、コンサルタントにとって「伝える」とは、クライアントの未来を変えるための“働きかけ”なのです。
理解させるために必要なのは “わかりやすさ×思いやり”
プロジェクトメンバーの資料をレビューしていて、わかりづらい文章や図表について指摘をすると、自信たっぷりに「ここに書いてあります」、「この文章はこういう意図です」と返されることがあります。さらに、“書いてあるのだから修正は不要”というスタンスには驚かされます。このようなケースでは大抵、書き手の“伝えたい”が優先され、読み手の“理解したい”が置き去りにされています。
クライアントが苦労してその意図を汲み取らなければ理解できないような説明は、自分都合で相手を思いやらない“不親切な説明”です。
受け取った情報を整理するために頭の中で行う作業を、クライアントに代わって事前に処理し、その内容を受け入れるべきかどうかを彼らが判断できる状態にいち早くしてあげることがコンサルタントの役割です。
●理解を阻害する不親切の例
- 言いたいことを1ページにすべて詰め込んでいる
- 太字、赤字、下線を多く使用しすぎて、強調箇所だらけになっている
- 相手の知らない専門用語をあちこちで使用している
- 単語を、定義が曖昧なまま使用している
- ストーリーが筋道立てられていない
- 相手の関心事、性格、状況を無視した構成になっている
- 単語や用語が資料内で統一されていない
- ページのタイトルと内容が整合していない
“親切な資料”を作成するためには、相手が何を知りたがっているか、どう説明されたらわかりやすいかを、相手の立場に立って真摯に考える姿勢が不可欠です。
相手を“思いやる心”が、資料の“わかりやすさ”を高め、「理解」を生み出します。
共感させるためには “相手ニーズの合致×根拠” が前提
自分の主張をクライアントが理解したとしても、その内容に納得してくれなければ意味がありません。
共感は、「この人の主張は、私の問題を解決してくれる」と相手が感じた瞬間に生まれます。
この共感を生み出すために不可欠な要素が2つあります。
①相手ニーズとの合致
そもそも主張が相手のニーズとずれていては、どれだけ資料が優れていても効果はゼロです。
コンサルタントが作成する提案書は、一般的には以下のような構成で書かれます
- クライアントの課題とニーズ
- プロジェクトの目的
- プロジェクトの進め方と成果物
- スケジュールと体制
- 見積り報酬額
筆者は、提案書の提出期限がどんなに短期間であっても、最初のページである「クライアントの課題とニーズ」を書き上げる作業に相当の時間とエネルギーを使います。
時によってはページ1枚を作成するのに、丸一日以上かけることもあります。
なぜなら、この認識がずれるとプレゼンテーションは即終了、あとのページはすべて無駄になってしまうからです。そのため、クライアントからヒアリングしたことを何度も反芻し、文章の一字一句を納得がいくまで書き直します。
その代わり、「クライアントの課題とニーズ」が自分の中で整理しきれると、それ以降のページはすんなりと作成できるようになります。相手の悩みを考え抜くプロセスの過程で、プロジェクトの目的や進め方のポイントなどが自然と頭の中で整理されてくるからです。
そうして出来上がった提案書は、自信を持ってクライアントに説明することもできます。
②主張の根拠
ビジネスにおいて、共感とは感情的なつながりではなく、論理的に納得することです。
「なぜそうすべきなのか」
「なぜそう考えるのか」
主張は、それを裏付ける根拠が明確に示されていなければ、単なる絵空事にすぎません。
- データ
- 事例
- 思考のロジック
- 仕組みやプロセスの説明
- 比較
こうした根拠があるからこそ、相手は「あなたの言うことは正しい」→「やってみよう」という心理プロセスを踏むことができます。
行動を促すためには “実現可能性” が感じられること
理解し、共感しても、「でも、できる気がしない」と思われてしまったら、人は動きません。行動を促すためには、“これならできそうだ”という実現可能性が感じられなければなりません。
具体的には、次の4つの要素が鍵となります。
- 取り組みのアプローチ(How)
どんな手順で進めるのか、どこから着手するのか。 - スケジュール(When)
どれくらいの期間で、どの段階まで到達できるのか。 - 予算(Cost)
どれくらいの投資が必要で、どの程度のリターンが見込めるのか。 - 体制(Who)
誰が、どの役割を担えば実行できるのか。
これら4つの要素を明確に示すだけでなく、その内容が行動のハードルを下げるような合理的、具体的な内容になっていることが、クライアントの背中を押すための最後の要件です。
まとめ
コンサルタントにとっての「伝える」は、クライアントが行動に移すまでの責任を持つプロセスです。
そのためには「理解」、「共感」、「行動」の3要件を揃えることが必要です。
資料作成、プレゼンテーションを行う際には、これら3要件がそろっているかを事前にチェックし、
- 自分都合になっていないか
- 相手のニーズは何か、内容はニーズに合致しているか
- 根拠は明確に示せているか
- 行動のハードルを下げられているか
を確認するようにしましょう。

