「木を見て森を見ず」 これはヒアリングにも言える諺です。
ヒアリングの際に、目先のキーワードやトピックにばかり注目してしまい、大きな視野に立って物事の全体像を捉えることをおろそかにすると、事実を見誤るばかりか不適切な解決策を導き出してしまう恐れがあります。
ヒアリングでは、物事を構成する個々の要素に焦点を当てて丁寧に分析する視点と、物事を高い位置から全体を俯瞰的に捉える視点の両方が必要です。この2つの視点を上手に使いこなすと、クライアントの問題を短時間で構造的に理解し、最適な解決策を最短距離で導くことができるようになります。
本記事では、クライアントにヒアリングを行う際に不可欠な2つの視点と、その使い方について説明します。
近視眼的ヒアリングの問題点
ヒアリングで陥りがちな過ちの一つに、目先のキーワードやトピックにばかり注目してしまい、物事の全体像や本質を理解できないままヒアリングを終えてしまうことがあります。
ヒアリングでは、限られた時間の中で初対面の相手の話を聞き、適切な質問をかさねることにより、必要な情報を入手しなければなりません。制限時間のプレッシャーにかられて、会話の糸口らしき言葉を見つけるとつい飛びつきたくなってしまいます。
しかし、目の前のことにだけ気を取られて物事の全体像を見通せない(近視眼的)でいると、事実誤認や作業の手戻りを招き、クライアントの信頼を損ねてしまうおそれがあります。
【近視眼的ヒアリングの問題の例】
- 重要性の低い事項に多くの時間を費やし、時間切れになる
- 現状を正確に把握することができず、見当違いな解決策を導き出す
- あとになって事実の誤認や見逃しに気が付き、ヒアリングをやり直す
コンサルタントに必要な2つの視点
ヒアリングを成功させるために、コンサルタントは2つの視点を備え、カメラのズーム機能のように両者を状況に応じて使い分ける必要があります。
①細部を観察する視点
物事を構成する個々の要素にさまざまな角度から焦点を絞り、丁寧に分析する際の視点。虫の目の複眼のように注意深く物事を見ることで、詳細に理解する。
【視点の例】
- その作業は誰が担当しているのか
- その作業はいつおこなうのか
- その作業に要する時間はどれくらいか
- その作業で必要となる情報は何か、作業の結果どのような帳票を作成するか
- その作業におけるチェックはどのようにおこなっているか
②全体像を捉える視点
物事を大所高所から捉える際の視点。
広い視野で全体を見ることによって個々の要素間の繋がりやそれぞれの位置づけなどを理解する。
【視点の例】
- その作業の目的、意義は何か。なぜその作業が必要なのか
- その作業の前工程、後工程ではどのような作業をおこなっているか
- 他の作業を含めた全工程のスケジュール、時間割はどのようになっているか
- 他の作業を含めた最終的なアウトプットはどのようなものか
- 他の作業を含めた全工程において、チェック機能はどのように分担されているか
2つの視点の使い方
①全体像→細部
物事の全体像や、物事を構成する各要素の関係、位置づけを理解したうえで、個々の要素について詳細に情報を入手します。
この順番でヒアリングをおこなう狙いは、細部を観察する視点を使って深堀りすべき要素の「あたりを付ける」ことです。相手の説明に登場するキーワードやトピックに闇雲に飛びつくと、無駄な時間を費やしてしまうおそれがあります。物事の全体が理解できると、次第に個々の構成要素の特徴、違いが見えるようになってきます。物事に対してピントが合ってくると、出たとこ勝負ではなく、ヒアリングを効率的に進めるためのアプローチ方法が具体的にイメージできるようになります。
効果
- 要素ごとの重要度を把握することができ、時間をかけるべき領域と不要な領域とを区分することができる
- 質問すべき項目、内容が具体的になる
- 何から話を聞くべきか、どの質問を先にすべきかなど、ヒアリングの段取りを組み立てることができる
なお、この順番はヒアリングの際の質問の仕方に限らず、現状把握、問題抽出、原因特定といったコンサルタントが業務としておこなう作業全般において共通する原則です。
まずは全体像を把握してから細部に焦点を絞り込む。「ピントを合わせて、ズームイン」することを常に心がけましょう。
②細部→全体像
ヒアリングでは、必ずしも想定していた流れで会話が進むとは限りません。時には物事を構成する特定の要素についての会話からヒアリングが始まることもあります。
そのような場合は、情報をある程度入手したところで一度立ち止まり、視座を少し高くしてその要素の背景や前後関係などについても把握し、それまでに入手した情報との関係性、整合性などを確認することにより、自身の理解の正しさをセルフチェックすることができます。
効果
- 自身の誤解や理解不足に気付くことができ、事実を正確に捉えることができる
- 次に確認すべきテーマ、質問すべきことが明らかになる
- さらに時間をかけて深堀りすべきかどうかを判断することができる
実務では、必ずしも①、②のどちらかのパターンでヒアリングが進むことはなく、全体像→細部→全体像→細部・・・といった形で、2つの視点をその時々で繰り返しながら情報を入手し、理解を深めていくことになります。
目指すべきは、質問を無駄打ちすることなく、必要なところに集中させることです。そのためには、物事を一つの側面のみ見て結論を出そうとしないことです。
まとめ
ヒアリングでは、物事を構成する個々の要素にさまざまな角度から焦点を絞り丁寧に分析する視点と、物事を高い位置から全体を俯瞰的に捉える視点の両方から情報を入手することにより、クライアントの問題を短時間で構造的に理解し、最適な解決策を最短距離で導くことができるようになります。
ヒアリングが苦手と感じている方は、全体像を把握してから細部に焦点を絞ることを常に心がけましょう。ヒアリングの現場では、個々の作業や細かい論点に話題がいきがちですが「相手の言っていることがよくわからないな」、「これって本当に重要なことかな」と思ったら、会話の途中でも勇気を出して「ちょっと待ってください」と立ち止まり、もう一つ高い視点からそれまでの議論を整理してみましょう。

